一人暮らしの女性の防災|ひとりで備えること、ひとりで避難するときのこと

夜、ひとりの部屋で大きく揺れたら。 仕事帰りの駅で、電車が止まったら。
一人暮らしでは、揺れた直後に「大丈夫?」と声をかけてくれる家族が、同じ部屋にいません。 無事を知らせる相手も、助けを呼ぶ方法も、自分で用意しておく必要があります。
この記事では、防災庁(防災情報のページ)、内閣府男女共同参画局、東京都、総務省、NTT東日本の資料をもとに、
- 無事を知らせる・助けを呼ぶ準備
- ワンルームの安全と、少ない収納での備蓄
- 夜の帰り道で被災したときの動き方
- 在宅避難か、避難所かの判断
を、順番にまとめました。
POINTポイント
一人暮らしの備えは「連絡する相手と方法を決める」ことから。今日、家族か友人に「災害のときは171で連絡しよう」と送ってください。
この記事の目次
1. 無事を知らせる相手と、助けを呼ぶ方法を決める
「連絡する相手」と「連絡の方法」を、先に決めておく
総務省のページでは、東日本大震災の直後、平常時の約50〜60倍以上の通話が一時的に集中した携帯電話会社もあったとしています。大きな災害では、電話はつながりにくくなります。 だからこそ、前もって次の2つを決めてください。
- 誰に知らせるか(家族、離れて住む親戚、友人など)
- どうやって知らせるか(災害用伝言ダイヤル、伝言板、SNSなど)
「東京くらし防災」は、災害用伝言サービスやSNSなど、複数の連絡手段を用意しておくよう勧めています。
災害用伝言ダイヤル「171」の使い方
171は、電話がつながりにくくなったときに使える「声の伝言板」です。NTT東日本の資料をもとにまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 録音する | 「171」→「1」→ 自分の電話番号(固定電話は市外局番から) |
| 聞く | 「171」→「2」→ 相手の電話番号 |
| 録音できる長さ | 1件30秒以内 |
| 使える番号 | 固定電話のほか、携帯電話の番号でも登録できる |
| 使える時 | 大きな災害で電話がつながりにくくなったとき |
NTT東日本は、伝言を残す電話番号を、家族や友人とあらかじめ決めておくよう勧めています。 一人暮らしなら、「私の携帯番号に録音する」と、相手に伝えておきましょう。
文字で残すなら「災害用伝言板(web171)」
スマートフォンやパソコンからは、災害用伝言板(web171)で、文字の伝言を残せます。1件100文字以下です。 携帯電話会社ごとの災害用伝言板もあり、総務省のページで各社の入り口が紹介されています。
MEMOメモ
web171には、伝言が登録されたら相手にメールや電話で知らせる「通知先」を、前もって登録しておける仕組みがあります(メールは最大10件)。総務省のページでも、事前に設定しておくよう勧めています。ひとりで暮らしていると、異変に気づいてくれる人が近くにいないこともあります。自分から知らせる仕組みを、先に作っておきましょう。
体験日に、一度だけ試す
171とweb171は、毎月1日・15日、正月三が日、防災とボランティア週間(1月15日〜21日)、防災週間(8月30日〜9月5日)に体験利用ができます(NTT東日本)。 直近では、11月15日が体験日です。その日に、家族か友人と一度だけ試してください。
声を出せないときのために、笛を
家具の下敷きになったり、部屋に閉じ込められたりしたとき、ひとりでは助けを呼ぶしかありません。 東京都の「東京くらし防災」では、すぐに持ち出すリュックに入れる物として防災用ホイッスルを挙げています。 枕元と、いつものバッグに一つずつ入れておきましょう。
近所に「顔見知り」を一人つくる
「東京くらし防災」では、隣近所と日頃から顔の見える付き合いをすることを、備えの一つとしています。 マンションでは、落ち着いたら安否確認カードなどを玄関先に出して、自分の無事を知らせるよう勧めています。 あいさつを交わせる人が近くに一人いるだけで、ひとりきりにならない備えになります。
2. ワンルームの安全と、少ない収納での備蓄
寝ている場所に、倒れてくるものを置かない
ワンルームは、寝る場所と家具がとても近くなります。 「東京くらし防災」では、いつも寝ている場所に寝転んでみて、倒れてくる家具や、頭に落ちてくる物がないか確かめるよう勧めています。同じ資料では、次の工夫も紹介されています。
- 窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る、カーテンを閉めて寝る(ガラスの飛び散り対策)
- メガネ、スマートフォンなどは枕元に。すべり止めシートや、固定した壁掛け収納に入れて、揺れで飛ばないようにする
- 近くに底の厚いスリッパを置く
- 停電でつく足元灯や、枕元のヘッドライトで、暗い中でも動けるようにする
家具の固定のしかたは、「地震にそなえる」で、効果が高い順にまとめています。賃貸で壁に穴を開けられない場合の方法も紹介しています。
物が少ない部屋ほど、安全になる
「東京くらし防災」は、物を持たないシンプルな暮らしは防災への近道だとしています。
- 収納は、重い物は下、軽い物は上
- ドアや玄関まわりに物を置かず、逃げ道をふさがない
- 不要な物は捨てておく
備蓄は「いつもの物を少し多めに」
「東京くらし防災」には、30代の方の体験談として、一人暮らしで冷蔵庫がいつも空っぽだったため、震災直後に食料が手に入らず苦労したという声が紹介されています。
収納が少ない部屋でも続けやすいのが、日常備蓄(ローリングストック)です。ふだん食べている物を少し多めに買い、古い物から食べて、食べた分を買い足します。 「東京くらし防災」では、水と食料は最低3日間分を目安にするよう勧めています。
| 種類 | 例(「東京くらし防災」より) |
|---|---|
| そのまま食べられる物 | 飴・チョコレート、ナッツ、ドライフルーツ |
| 火や水を使わずに食べられる物 | 缶詰、肉・魚の加工品 |
| お湯を注ぐか温めるだけの物 | レトルト食品、フリーズドライ食品、ゆで時間の短い細い麺 |
ひとり分なら、量はそれほど多くありません。必要な量は備蓄量の計算で確かめてください。 水が止まったときのトイレは、「携帯トイレは何回分いる?」でまとめています。
お風呂の時間も、ひとりで考えておく
「東京くらし防災」は、入浴中に被災し、浴室の扉が開かずに閉じ込められると、体温が下がり、冬は特に寒い思いをするとしています。 バスタオルや着替えを手に取れる場所に置き、脱衣所に底の厚いスリッパを置くよう勧めています。
3. 夜の帰り道で被災したら:むやみに動かない
基本は「むやみに移動を開始しない」
国の帰宅困難者対策のガイドライン(令和8年1月改定、防災庁の「防災情報のページ」で公開)は、大きな地震のときに**「むやみに移動を開始しない」ことを基本原則としています。 同じガイドラインでは、発災から72時間(3日間)は人命救助に重要な時間なので、帰宅困難者は原則3日間は安全な場所で待つ**ことが想定されています。
「東京くらし防災」は、その理由を次のように説明しています。
- 帰ろうとする人で道路が埋まると、救急車や消防車が通れなくなる
- 歩いているうちに余震にあうおそれがある
- 混雑に巻き込まれて群衆なだれにあうおそれがある
だから、家が気になっても、発災後すぐに歩いて帰るのはやめてください。 会社や駅、施設など、安全な場所にとどまります。
揺れたときの、場所ごとの動き方
| 場所 | すること(東京都「外出時の行動マニュアル」より) |
|---|---|
| 駅 | 落下物から身を守る。ホームから落ちないよう柱のそばへ移るか、うずくまる。線路には絶対に下りない。駅員の指示に従う |
| 電車の中 | かばんで頭を守り、姿勢を低くする。つり革や手すりにつかまる。乗務員の指示に従う |
| 住宅街 | 瓦やガラスの落下から身を守る。ブロック塀に近づかない |
| 繁華街 | かばんで頭を守る。落下物やビルの倒壊に注意し、公園など広く安全な場所へ |
行き場がないときは「一時滞在施設」へ
「東京くらし防災」では、大きな地震のとき、行き場のない帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設が開設されるので、近くの施設へ向かうよう勧めています。
混乱がおさまり、歩いて帰るときは、災害時帰宅支援ステーションが使えます。東京都では、島しょを除く都立学校などのほか、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなどがこの役割を担い、水道水・トイレ・災害情報を提供するとしています。
いつものバッグに入れておくもの
「東京くらし防災」の「徒歩帰宅グッズの例」には、飲料水、チョコレートやキャラメル、モバイルバッテリーと充電ケーブル、携帯トイレ、マスク、懐中電灯などが並んでいます。 特に、情報を集め、安否を知らせるために、スマートフォンを使える状態にしておくことが大切だとしています。
CAUTIONここに注意
「東京くらし防災」は、危険を承知で急いで歩いて帰る行動はNGだとしています。部屋のことが気になっても、自分の身の安全を最優先にしてください。
4. 在宅避難か、避難所か
「避難」は、避難所に行くことだけではない
国の避難情報の資料(防災情報のページ)では、「避難」とは「難」を「避」けることであり、安全な場所にいる人は、避難場所に行く必要はないとしています。 一方で、危険な場所にいる人は、警戒レベル4(避難指示)までに、全員避難です。
台風や大雨にそなえて、まずハザードマップで自分の家がある場所を確認してください。同じ資料では、浸水や土砂災害のおそれがある色の塗られた場所なら、原則として家の外への避難が必要だとしています。
地震のあとは、2つの順で考える
「東京くらし防災」では、次の順番で判断するよう勧めています。
- 自宅にいて危険はないか(倒壊、火災、土砂災害のおそれ)→ 危険があれば、すぐに避難する
- 自宅にとどまって生活ができるか → 不安があれば、避難所の利用を考える
また、避難所は自宅が全半壊するなど、在宅避難ができない人が優先です。自宅が無事なら、そのまま家で暮らす在宅避難が基本とされています。
家を離れるときは、ブレーカーを落とし、ガスと水道の元栓を閉め、安否メモを室内などに残し、伝言板やSNSで連絡するよう勧めています。
在宅避難の防犯
「東京くらし防災」は、被災地では混乱に乗じた空き巣や詐欺に注意するよう呼びかけています。
- 外出するときは、いつも以上に戸締まりをする
- 割れた窓ガラスが外から見えないよう、目隠しをする
- 玄関先に電池式の防犯灯をつけ、在宅をアピールする
避難所での身の守り方や、女性用品の備えは「女性の防災」でまとめています。
CAUTIONここに注意
避難所などで性暴力の被害にあったら、ひとりで抱えこまないでください。内閣府男女共同参画局は、性犯罪・性暴力の相談先として、全国共通の短縮番号「#8891」(最寄りのワンストップ支援センターにつながる。NTTのひかり電話からは0120-8891-77)を案内しています。
今日・今週・今月にできること
| いつ | やること |
|---|---|
| 今日 | 家族か友人に「災害のときは、私の携帯番号で171に録音する」と伝える/枕元にホイッスルとスリッパを置く |
| 今週 | 寝る場所に寝転び、倒れてくる物がないか確かめる/いつものバッグにモバイルバッテリーと飲み物、チョコレートを入れる |
| 今月 | 11月15日(または12月1日)の体験日に171かweb171を試す/web171に通知先を登録する/ハザードマップで自宅の場所を確かめる |
防災の全体の順番は「防災は何から始める?」、確認項目は防災チェックリストにまとめています。
よくある質問
Q近くに家族がいません。誰に連絡すればいいですか?
離れて住む家族や親戚、友人など、確実に連絡を取り合える人を決めてください。東京都の「帰宅困難者心得10か条」でも、安否確認に「遠くの親戚」を使うことが挙げられています。web171なら、伝言の登録を最大10件のメールアドレスに知らせる設定ができます。
Q固定電話がありません。171は使えますか?
使えます。NTT東日本によると、携帯電話の番号でも伝言を登録できます。携帯電話から171にかけられるかや通話料については、契約している携帯電話会社に確認してください。
Q会社にいるときに大きな地震が来たら、家に帰ったほうがいいですか?
すぐに帰らず、会社など安全な場所にとどまってください。国のガイドラインは「むやみに移動を開始しない」を基本原則としています。職場にどんな備蓄があるかも、日頃から確かめておきましょう(「東京くらし防災」)。
まとめ:ひとりでも、つながる準備を
- 一人暮らしは、無事を知らせる相手と方法を、自分で決めておく
- 171は「171→1→自分の番号」で録音。毎月1日・15日に体験できる
- 寝る場所に倒れてくる物を置かず、枕元にスリッパ・明かり・ホイッスル
- 備蓄は、いつもの物を少し多めに。最低3日間分
- 外で被災したら、むやみに移動しない
- 自宅が安全なら在宅避難が基本。危険な場所なら警戒レベル4までに避難
ひとりで暮らしていても、ひとりきりで災害を乗り切る必要はありません。 今日、家族か友人に「災害のときは171で連絡しよう」とメッセージを送ってください。それが、いちばん最初の備えです。
出典:
- 総務省「災害用伝言サービス」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)伝言の録音方法」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)ご利用方法」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」
- NTT東日本「災害用伝言板(web171)概要とご提供のしくみ」
- NTT東日本「災害用伝言板(web171)ご利用方法(通知先設定)」
- 防災庁 防災情報のページ「帰宅困難者等対策」
- 防災庁 防災情報のページ「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(令和8年1月改定・PDF)
- 防災庁 防災情報のページ「避難行動判定フロー」(PDF)
- 防災庁 防災情報のページ「避難情報のポイント」(PDF)
- 東京都「東京くらし防災」(PDF)
- 東京都防災ホームページ「帰宅困難者の行動(心得10か条)」
- 東京都防災ホームページ「外出時の行動マニュアル(地震発生時)」
- 東京都防災ホームページ「帰宅困難者に対する支援」
- 内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」
